作家紹介
こどもの本を考える:西本鶏介
No.104子どもに読ませたい大人の小説
文部科学省の検定に合格した教科書であっても学校で採用されなければどうにもなりません。だから教科書会社はこどもたちよりも、先生方に気に入られるよう必死な努力をします。国語の教科書で文学教材を選ぶ時も、まずは教科書として使いやすいかどうかが検討されます。どんなにすぐれた作品であってもテーマが重すぎたり、シリアスすぎる作品ははずされます。したがって不幸な家庭やこどもを描いた作品は、ほとんど教科書に載ることはありません。理由はそういうこどもが教室にいたら、先生が対応するのがむずかしいからです。
近頃は死を扱った作品も少しは取りあげられるようになりましたが、暗すぎないことが条件です。社会科的な教材がふえ、文学作品が少なくなった上に教科書会社の自主規制が強くては、教科書の作品からこどもたちの読書力を広げることは困難です。だからこそ朝の読書時間が注目されるようになったのかもしれません。そこではどんな本も自由に読むことができます。教科書には決して取りあげられないいじめや不幸をのりこえる話だって読むことができます。さまざまな作品を読むことで読書への興味がどんどんふくらんでいきます。
「読書の時間によむ本」のシリーズは、そんなこどもたちのためにまとめた作品集です。戦前から今日までに書かれた作品の中から、こどもたちにぜひ読んでほしいと思う作品を学年ごとに十編選んであります。
いずれも短編で読書の時間内に読めるはずです。かつて「副読本」といわれる本がありました。教科書にそえて補助的に使う本のことです。いうなれば今日の「副読本」としてこのシリーズを利用してほしいと思います。本当にすぐれた作品は時代や環境が変わっても色あせないことがよくわかります。有名な作品ばかりでなく、ぼくがかつて読んで面白かった作品もたくさんふくまれています。こどものためにつくった文学作品だけの理想の教科書だと自負しています。
西本鶏介(にしもとけいすけ)
1934年、奈良県に生まれる。児童文学の評論・創作・民話研究など幅広く活躍。各種の児童文学賞の選考委員をつとめる。昭和女子大学文学部教授。各ジャンルにわたって著書は多いが、読み聞かせのための本として『読みきかせ日本昔ばなし(10巻)』(小学館)『童話が育てる子どもの心』(同)『子どもとお母さんのためのお話(日本・外国)』(講談社)、『こどもと大人のためのメルヘン・グリム童話(1)・(2)』(ポプラ社)、絵本に『お母さん、ひらけゴマ!』(同)などがある。

















