作家紹介

こどもの本を考える:西本鶏介
No.101二十五年間の「毎日童話新人賞」

毎日新聞社主催の「毎日児童小説賞」、「毎日童話新人賞」が今年(二〇〇二年度)で中止になり、来年度の応募を行わないといいます。前者は昭和二十六年児童憲章制定を記念して創設され、後者は昭和五十一年「毎日こども新聞」の発行を機に創設されました。前者は今年で五十一回、後者は二十五回、とりわけ前者は半世紀も続いた貴重な新人登竜門でした。この二つの賞によって作家となった人たちも少なくありません。それほど長く続いた児童文学賞をなぜ中止するのか。理由はいうまでもなく経済的不況のため、協賛会社の援助が受けられなくなったからで、残念というしかありません。

ぼくは「童話新人賞」の第一回からの選考委員で、創設から終了までの二十五年間、この新人賞の選考にかかわってきたことになります。最初の選考委員はもうおなくなりになった福田清人、藤田圭雄の両氏とぼくの三人でした。福田氏は明治三十七年生まれ、藤田氏は明治三十八年生まれ、ぼくは四十代の初め頃でしたから三十歳ほどの年齢の開きがありました。お二人は小学校時代、わらじばきで小学校へ通ったというのですからその文学観はすばらしくても若い感性が理解しづらく、新人の表現力に対して、この言葉は汚すぎる、この考えは反モラル的だと内容よりもその方ばかりに注文がつくので、ほとほと困ってしまいました。ぼくはそんなことをいっていたら新しい作品は生まれないと、だだっ子のように反駁しましたがなかなか受け入れてもらえません。とうとうがまんできず、新聞社の人に「ぼくは選考委員をやめたい」と申し込んだら、ぼくが残って、お二人の代わりに寺村輝夫氏と岩崎京子氏が選考委員になられ、その後もこの顔ぶれは変わりませんでした。どうしてそうなったのか、理由はよくわかりませんがいまとなってはお二人に申しわけないような気もするのですが。この童話賞からデビューした作家に吉橋通夫氏、村山早紀氏などがいて、板東眞砂子氏は大人向きの小説家として大活躍しています。

西本鶏介(にしもとけいすけ)

1934年、奈良県に生まれる。児童文学の評論・創作・民話研究など幅広く活躍。各種の児童文学賞の選考委員をつとめる。昭和女子大学文学部教授。各ジャンルにわたって著書は多いが、読み聞かせのための本として『読みきかせ日本昔ばなし(10巻)』(小学館)『童話が育てる子どもの心』(同)『子どもとお母さんのためのお話(日本・外国)』(講談社)、『こどもと大人のためのメルヘン・グリム童話(1)(2)』(ポプラ社)、絵本に『お母さん、ひらけゴマ!』(同)などがある。

ページトップに戻る