作家紹介
こどもの本を考える:西本鶏介
No.199伝記の人気一位はイチロー
先日の新聞(「毎日新聞」平成23年10月27日)に「第57回学校読書調査」の結果が載っていました。その中に「今まで読んだ中で一番良かった伝記」のアンケートで第一位に選ばれた人物は男子の小学生・中学生・高校生ともイチローというのにはおどろきました。ちなみにトップ5にあげられたほかの人物は坂本竜馬、織田信長、野口英世、エジソンなどでした。イチロー以外はすべて歴史上の人物や先人であるのに、どうして現役の野球選手が第一位になったのでしょうか。
その伝記を選んだ理由として「一生懸命努力した」が圧倒的に多いのを見ても、理想の歴史的人物よりも目に見える成果を示す生きている人物の方が子どもたちの共感を呼ぶのかもしれません。だからといってスポーツ選手やタレントの伝記ばかりがもてはやされても困ります。「わが国の歴史や先人の働きについて理解と関心を深める」、「先人の伝記など感動を覚える教材を活用する」と小学校の学習指導要領にもあるように読ませるべきはすぐれた先人の伝記です。ちなみに先人とは前代の人、昔の人であり、生きている人のことではなく、そもそもイチローの伝記と坂本竜馬の伝記を同格に扱うのはまちがっています。いかにイチローがすぐれたスポーツマンであっても偉人というわけにはいきません。
偉人ということばにはなんとなく抵抗があるという人もいるけれど、歴史を動かしたり、並はずれた仕事を成しとげた人は偉大な人物であり、すぐれた人物であることに変わりがありません。そういう人物の伝記は、これからも偉人伝として堂々と子どもたちにすすめるべきです。
小学生の65%が伝記好きだったのに、中学生では52%、高校生では47%と、減少していくのは中高生にふさわしい本がないからだそうですが、中高生でも読める歴史人物伝が数多くあることを教えてあげる大人が圧倒的に少なくなったことこそ、反省すべきでしょう。
(2012年1月号)
西本鶏介(にしもとけいすけ)
1934年、奈良県に生まれる。児童文学の評論・創作・民話研究など幅広く活躍。各種の児童文学賞の選考委員をつとめる。昭和女子大学文学部教授。各ジャンルにわたって著書は多いが、読み聞かせのための本として『読みきかせ日本昔ばなし(10巻)』(小学館)『童話が育てる子どもの心』(同)『子どもとお母さんのためのお話(日本・外国)』(講談社)、『こどもと大人のためのメルヘン・グリム童話(1)・(2)』(ポプラ社)、絵本に『お母さん、ひらけゴマ!』(同)などがある。


















