作家紹介

こどもの本を考える:西本鶏介
No.175子どもの書いた童話を読む

童話を読むのではなく、書く子どもたちが増えています。童話作家にとっては複雑な心境で、そんなヒマがあったら私の書いた本を読みなさいと、いいたくなるかもしれません。なぜ、子どもたちが書くようになったか。近頃は大人だけでなく、子どもも対象にした児童文学賞やさまざまなコンクールがあって、それに応募する機会が多くなったからです。では、そのレベルはどうなのか。ぼくの見聞する限り、決して低いものではありません。とりわけ受賞作ともなると、大人の書いた作品よりもはるかに面白く読めます。

たとえば今年の「ミツバチの童話と絵本のコンクール」で子どもの部の童話の最優秀に選ばれた「へんしん家族」(豊川遼馬・小四)。虫の町の商店街の抽選会で一等の変身チケットをもらったアリの百人家族が相談の末、ハチに変身するというユニークな発想から生まれた童話で、思わず笑ってしまいました。(第十一回ミツバチの童話・絵本賞作品集」)

あるいは今年の「JOMO童話賞」の小学生の部の最優秀に選ばれた「どんぐりの実だった頃」(一戸笙史・小五)。どんぐりの木が子どもだった頃、北風さんがいくらがんばっても落ちないぼくを子どもたちの集まる校庭まで運んでくれた小鳥さんのことを語る童話で、ほのぼのとしていて季節感にもあふれています。(「第四十回JOMO童話賞作品集 童話の花束」)

まずは発想が奔放で、どんな素材もいきいきとしたお話になります。大人の常識から自由なため、作者の思いがストレートに伝わってきます。素朴でのびやかな文章はいかにも子どもらしい感性が光っています。更には『12歳の文学』(小学生作家たち著 小学館文庫)に収められた作品などを読むと、大人顔負けのすばらしいファンタジー童話などがあって、そのたくみなお話づくりにびっくりさせられます。そんな子どもたちに負けないよう、大人の童話作家たちも大いにがんばってほしいと思います。
(2010年1月号)

西本鶏介(にしもとけいすけ)

1934年、奈良県に生まれる。児童文学の評論・創作・民話研究など幅広く活躍。各種の児童文学賞の選考委員をつとめる。昭和女子大学文学部教授。各ジャンルにわたって著書は多いが、読み聞かせのための本として『読みきかせ日本昔ばなし(10巻)』(小学館)『童話が育てる子どもの心』(同)『子どもとお母さんのためのお話(日本・外国)』(講談社)、『こどもと大人のためのメルヘン・グリム童話(1)(2)』(ポプラ社)、絵本に『お母さん、ひらけゴマ!』(同)などがある。

ページトップに戻る