作家紹介
こどもの本を考える:西本鶏介
No.167絵本『くまとやまねこ』を読む
今はなんだってランキングをつける時代です。第一位ともなれば、その効果は絶大で、商品の場合、まちがいなく売れゆきが向上します。本も例外ではありません。文学賞を受賞するより本屋大賞に選ばれる方がベストセラーになりやすいのです。第一回MOE絵本屋さん大賞第一位の『くまとやまねこ』(湯本香樹実ぶん・酒井駒子え・河出書房新社)がよく売れているというので、さっそく読んでみました。小説『夏の庭―The Friends』で評判になった作家らしく、死者への鎮魂歌ともいえる感動的なストーリーです。くまの仲よしだった小鳥が死にました。くまは小さな箱を作り、その中に花びらを敷きつめて、亡骸を収めます。どこへ行くにも箱を持って歩き、悲しみのあまり、家に閉じこもってしまいます。久しぶりのお天気で外へ出たくまは、川べりで、おかしな箱を草の上に投げ出して昼寝をしているやまねこと出会います。お互いに箱の中を見せあったあと、やまねこは箱の中からバイオリンを取り出し、小鳥のために一曲演奏してくれます。その音を聞きながら、くまは小鳥と暮らした日のすべてを思い出します。演奏が終わるとやまねこがいいました。「いっしょにくるかい」。家をはなれたことがなかったくまですが、やまねことともに旅に出ることを決意します。
最愛の者をなくした悲しみを越えての新しい世界への旅立ち。静かに語りかける味わい深い文章とモノクロで描かれる淡い絵が見事にマッチして、読者の共感を呼びそうです。映画の『おくりびと』や小説の『悼む人』が話題になっている今日、この絵本が売れる理由がよくわかります。だからといって小さな子どもたちにまでぜひ読み聞かせたいとは思いません。後で埋めてあげるにしても亡骸を箱に入れて持ち歩いたり、ひどい傷を負っているのに抜けた羽根を恥ずかしがったりするなど、いささかエキセントリックすぎるからです。この絵本の書い手はあくまで大人のような気がします。
(2009年5月号)
西本鶏介(にしもとけいすけ)
1934年、奈良県に生まれる。児童文学の評論・創作・民話研究など幅広く活躍。各種の児童文学賞の選考委員をつとめる。昭和女子大学文学部教授。各ジャンルにわたって著書は多いが、読み聞かせのための本として『読みきかせ日本昔ばなし(10巻)』(小学館)『童話が育てる子どもの心』(同)『子どもとお母さんのためのお話(日本・外国)』(講談社)、『こどもと大人のためのメルヘン・グリム童話(1)・(2)』(ポプラ社)、絵本に『お母さん、ひらけゴマ!』(同)などがある。

















