作家紹介
こどもの本を考える:西本鶏介
No.164児童文学賞のこと
文学賞をもらっても売れゆきに結びつかないといわれますが、今年の毎日新聞の読書世論調査によれば、21%の人が文学賞をきっかけに本を購入しているそうです。近頃は全国の書店員が選ぶ本屋大賞というのがあって、受賞作がベストセラーになることも少なくありません。特に若い人の支持が高く、十代後半で29%、二十代で31%に達するといいます。
しかし、これはあくまで一般書のことであって児童文学書とはかかわりなく、著名な児童文学賞を受賞しても評判になることはなく、本屋大賞とも無縁です。本の帯に児童文学の○○賞受賞と書かれていたって大人の読者はともかく、子どもの読者にはなんの効果もないからです。いろんな児童文学賞の選者をつとめてきましたが、はなはだ悔しく、時にはむなしく思うこともあります。受賞者にしても受賞そのものより印税ではもらえそうもない賞金の方がうれしかったのではないかと勘ぐりたくなります。
それというのも児童文学作品で受賞しながら、自分は子ども向けに書いているつもりはなかったなどといって、さっさと大人向けの小説家に変身する人が少なくないからです。そんな人を見ていると、思わず児童文学をなめるなといいたくなります。どんな作品を書こうと、あくまで本人の自由ではあっても、児童文学が大人の文壇へデビューするための手段となるのは考えものです。
ヤングアダルト向きの小説が盛んになり、いわゆる大人の小説と児童文学の境界はせまくなりつつあります。大人も子どもも読める小説だってたくさんあり、その区分けを明確にしろというつもりはありません。それでもまずは子どもたちにすすめたい、すぐれた作品を選ぶ文学賞として、児童文学賞ではなく、だれもが受賞したくなるような童話賞があってもいいように思います。あるいは子どもが選ぶ童話大賞なんてのもいいかもしれません。最近はいい童話の本が少なくなったような気がします。
西本鶏介(にしもとけいすけ)
1934年、奈良県に生まれる。児童文学の評論・創作・民話研究など幅広く活躍。各種の児童文学賞の選考委員をつとめる。昭和女子大学文学部教授。各ジャンルにわたって著書は多いが、読み聞かせのための本として『読みきかせ日本昔ばなし(10巻)』(小学館)『童話が育てる子どもの心』(同)『子どもとお母さんのためのお話(日本・外国)』(講談社)、『こどもと大人のためのメルヘン・グリム童話(1)・(2)』(ポプラ社)、絵本に『お母さん、ひらけゴマ!』(同)などがある。

















