作家紹介
こどもの本を考える:西本鶏介
No.162子どももお年寄も共感できる絵本
いま、全国的にさかんなボランティアによる絵本の読み聞かせの相手はたいてい園児か小学校低学年児です。しかし、中には老人ホームのお年寄たちに読み聞かせしている人もいます。そこでは子ども以上に感激し、絵本が大好きになる人が少なくないといいます。私がときどき出かける読み聞かせの講習会にもお年寄がいて、読み聞かせは子どもたちのためだけでなく、自分のためにもなると話してくれます。絵本を読んで心をいやすのではなく、忘れていたみずみずしい感情を取りもどし、年の差を越えて子どもたちと共感できるからです。だとするならば、家庭の中でも、おじいさんやおばあさんによる孫への読み聞かせが広まってほしいものです。たまにしか会えないおじいさんやおばあさんの読み聞かせであれば、なおさらのこと、孫の心を刺激せずにはおきません。時には成長した孫が元気をなくしたおじいさんやおばあさんに絵本を読み聞かせてあげるのもすてきだと思います。≪丘の上で としよりと こどもと うっとりと雲を ながめている≫。これは山村暮鳥の「雲」という短い詩で、私の好きな詩の一つです。大人も子どもも一つになってこの広い空の中にとけこんでいくみたいで、まさにおじいさんと孫がお話の中にとけこんでいく感覚とそっくりな気がします。
もちろん、絵本の第一の読者は子どもです。お年寄のための絵本ではなく、子どものための絵本でなくてはなりません。それでも、子どももお年寄もいっしょに読んで、心を一つにできる絵本がもっと生まれてほしいものです。面白そうな絵本や感覚的には新しい絵本はたくさんあっても、しっかりと心に残る絵本が少ないように思います。家族やお年寄への感情がわざとらしく見える絵本は困りますが、人間ならではの本当のやさしさとはなにかを考えさせてくれる絵本はだれが読んでも胸をうちます。私が絵本のお話を書く時も、そのことを常に頭に置くようにしています。
西本鶏介(にしもとけいすけ)
1934年、奈良県に生まれる。児童文学の評論・創作・民話研究など幅広く活躍。各種の児童文学賞の選考委員をつとめる。昭和女子大学文学部教授。各ジャンルにわたって著書は多いが、読み聞かせのための本として『読みきかせ日本昔ばなし(10巻)』(小学館)『童話が育てる子どもの心』(同)『子どもとお母さんのためのお話(日本・外国)』(講談社)、『こどもと大人のためのメルヘン・グリム童話(1)・(2)』(ポプラ社)、絵本に『お母さん、ひらけゴマ!』(同)などがある。

















