作家紹介
こどもの本を考える:西本鶏介
No.161夢はこぶ読書の風を鹿屋から
先日、鹿児島県の鹿屋市文化会館で開かれた「家庭教育講演会」に出かけました。鹿児島空港から車で二時間ほどもかかる遠いところですが、読書に対する市民の関心の高さに感激しました。会場は二階席もふくめてほぼ満席で、千人近くの市民が集まったといいます。各地で講演することはあっても、こんなにたくさんの人が来てくれるなんて想像もしませんでした。まさに「伝えよう読書の喜び、広げよう読書の輪」をテーマにした熱心さで、「夢はこぶ読書の風を鹿屋から」という合言葉がウソでないことがよくわかりました。会館のとなりにある図書館にも子どもからお年寄りまでが常に出入りしていて、ブックトークや読み聞かせも盛んだと教育長が話していました。
大型書店のそろっている都会にいても読書に無関心な人は少なくありません。その気になれば、どこにいたって読書が楽しめます。みどりに囲まれた静かな環境の中で、読書に親しむことのすばらしさを思い知らされました。読書がどれほど心を豊かにしてくれるか、読書のよろこびを友だちや家族と語りあうことが、いかに人間らしい暮らしにつながるか、もはや語るまでもないような気がしたほどです。それでも、ぼくの話をしっかりと聞いてくれました。読みたくても本の少なかった子ども時代のぼくと、ありあまる本に囲まれた今日の子どもと大きくちがうのは、子どもの心を刺激してくれる大人がいなくなったことです。身近な大人の語ってくれるお話からすべてのものに魂があることを知り、いのちの大切さを学ぶことができました。子どもの語り部になるためには、まずは大人が本を読むべきです。鹿屋市の人たちのような読書の広がりが、そんな大人を増やしていくことになります。行政も市民も一つになっての読書運動は容易ではありません。しかし、それを見事に実践しているところもあるのです。子どもの将来にまだまだ希望の持てることを実感しました。
西本鶏介(にしもとけいすけ)
1934年、奈良県に生まれる。児童文学の評論・創作・民話研究など幅広く活躍。各種の児童文学賞の選考委員をつとめる。昭和女子大学文学部教授。各ジャンルにわたって著書は多いが、読み聞かせのための本として『読みきかせ日本昔ばなし(10巻)』(小学館)『童話が育てる子どもの心』(同)『子どもとお母さんのためのお話(日本・外国)』(講談社)、『こどもと大人のためのメルヘン・グリム童話(1)・(2)』(ポプラ社)、絵本に『お母さん、ひらけゴマ!』(同)などがある。

















